
10月のドル円相場は101円台でスタートした後、米国の年内利上げ観測の高まりなどから、足元では104円台半ばまで上昇している。
そして、今後はさらに円安ドル高に向かうことが予想される。11月8日の米大統領選でクリントン氏が勝利することで先行き不透明感が払拭され、リスク選好の円売りが入るほか、12月利上げがいよいよ確実視されてくるためだ。12月上旬までに最大で107円まで円安が進む余地があると見ている。
一方、12月半ばに利上げが行われた後は、「追加利上げは当分なさそう」との見方が市場で支配的となり、一旦利益確定のドル売りが進む可能性が高い。3ヵ月後には現状程度の水準に戻っていると予想する。日銀にはもはや円安に誘導する力は残っていないこともあり、次の米利上げが見えてくるまでドル円の上値は重くなりそうだ。
ユーロ円は10月上旬に115円台を付けた後にECBの量的緩和延長観測から下落し、足元は113円台で推移している。ECBは12月理事会で量的緩和延長を決定すると見ているが、そもそも緩和の拡大ではないうえ、市場では既にほぼ織り込み済みと見られる。3ヵ月後のユーロ円の水準は、現状と大差ないだろう。
長期金利については、▲0.1%に接近する局面で日銀が長期国債買入れの減額を行ったことで、下限は▲0.1%付近とのコンセンサスが市場で形成されている。一方で、0%に接近すると、最近の水準と比べた割安感から投資家の買いが入ることが見込まれる。従って、今後3ヵ月間にわたり、▲0.0%台半ばから後半での膠着した推移が続くと見ている。(執筆時点:2016/10/25)
上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト
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