売却に不利な条件をあえて告知した方がいい? その理由について

中古物件を売却することが決まれば、誰しもできるだけ早く売ってしまいたいものです。そのため、売却に不利になるような情報をできれば隠しておきたいという気持ちになる方も少なくないのではないでしょうか。

売却に不利になる条件として、以下のようなものが挙げられます。

  • 扉の建て付けが悪く、開閉しづらい
  • 対象物件、もしくは近所で火災や事故があった
  • シロアリ対策が必要である
  • 浸水や災害などのリスクがあるエリアである
  • 近所に変わった人が住んでいる
  • 国道が近くにあるため、夜間にトラックなどが頻繁に通ることによって騒音がひどい

このような不利な情報を購入希望者に告知すると、せっかく売れそうだったのにダメになってしまうことも考えられます。

しかし、物件を売却した後に瑕疵(上記のような売却に不利な条件)が発覚すると、「買主に聞かれなかったから」なんて言い訳は通用しませんので、トラブルになる可能性が高くなります。そのようトラブルにならないよう、事前に買主に自分が把握している物件の瑕疵を正直に伝えるようにしましょう。

また、マイナスな内容でも伝え方によってプラスになることがありますので、伝え方のコツをおさえておくことも大切と言えます。

そこで今回は、

  • 買主に伝えるべき情報と伝えなくてもよい情報の線引きは?
  • 不備があることを知っていたのに告知しなかった場合はどうなる?
  • 物件の不備を「言った」「言わない」の水掛け論を避けるために必須!告知書の作り方
  • 隠すつもりはないのに不備があった場合はどうなる?

などについて書いていきます。これから中古物件を売却されるご予定の方のご参考になれば幸いです。

1、買主に伝えるべき情報と伝えなくてもよい情報の線引きは?

「買主に不利な情報を伝えるべき」と言われても、ちょっとした家の不具合やご近所トラブルまで買主に赤裸々に話す必要があるのか、どこまでの情報を伝えたらいいのかの線引きが分からない方も少なくないでしょう。

ここでは伝えるべき情報とそうではない情報について説明していきます。

(1)売主に物件の不備を告知する義務がある?

詳しくは「2—(1)そもそも瑕疵担保責任とは」で記載しますが、一般的には売主は物件を売る際に瑕疵担保責任という責任を負います。これは、「通常の生活をするにあたって支障が出るような不備」があった場合に、買主は契約を解除できたり、売主に対して損害賠償請求できたり、さらに不備を修理するよう要求できるというものです。

瑕疵担保責任があることから、売主は「通常の生活をするにあたって支障が出るような不備」がある場合、正直に買主に対して告知する義務があるといえます。

(2)一覧表!売主に告知義務があるケースとそうではないケースは?

では、具体的にどのような不備について告知義務があるのでしょうか。

そもそも中古物件は、いくら売主が丁寧に使っていたとしても、経年劣化により、多少の不具合は生じます。

そのため、生活しているだけで出来てしまう

  • フローリングの傷
  • 壁紙の色褪せ
  • 壁の画びょうの穴

などのキズは、売主側に修繕の義務はありません。よってこのような経年劣化については売主は買主側に伝える必要はないでしょう。

一方、

  • 建て付けが悪くなり、扉の開閉がしづらい
  • 子供がおもちゃを落として、一部の床だけ深い傷をつけてしまった

など普通の生活でできる傷や劣化よりも少し不具合が大きいかもしれないと感じる部分については、買主に告知することによって、トラブルを未然に防ぐことができます。よってこのような不具合については買主に伝えるようにしましょう。

また、例えば、築年数がかなり古い木造一戸建ての場合、床鳴りがするといったケースは、床下の腐食、シロアリ被害が隠れているなど不具合の可能性があります。このような場合、早急に対策をする必要があることから、買主に告知しなければなりません。

告知義務一覧表

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(3)迷ったら不動産会社の担当者に相談!

場合は、媒介契約を締結している不動産会社の営業担当者に相談し、買主に伝えた方が良い情報と言う必要がない情報を選別してもらうといいでしょう。

基本的には、買主に納得して物件を購入してもらうためにも、物件自体のちょっとした傷や不具合については素直に話しておくようにすることが後々のトラブルを未然に防ぐために重要です。一方、近隣の住人や騒音など物件そのものには直接関わらないものの、住環境に少なからず影響が出る情報もきちんと伝えておくといいでしょう。しかし、出来る限りマイナスイメージとならないよう伝えるためにどうしたらよいかは不動産会社の営業担当者と相談するといいでしょう。

2、不備があることを知っていたのに告知しなかった場合はどうなる?

物件の不具合について知っていたのに、買主に告知しなかったことが発覚してしまった場合はどうなるのでしょうか。

この場合は、「詐欺」と受け取られ、損害賠償を請求された上に、物件の売買契約まで解除される可能性もあります。

このような最悪のケースを防ぐためにも、売主はできるだけ物件の情報を正確に伝え、買主に誠意のある姿勢を見せましょう。

3、物件の不備を「言った」「言わない」の水掛け論を避けるために必須!告知書の作り方

物件の不具合を買主(内覧者)に伝える場合、口頭で告知するのは避け、まとめて書面にしておくのがおすすめです。これは、「言った」「言わない」の水掛け論を避けるためです。

告知書は、不動産会社によって様式が決まっているモノがありますので、

  • 設備に不具合がないのか
  • 床に大きなキズがないのか
  • 今まで修理した箇所がないのか
  • リフォームした箇所はどこなのか

などの内容を細かく記載してもらい、売主、買主、不動産会社と3通を作成し、売主と買主の署名、捺印をした上に、お互いに保管するようにしましょう。

また、大きな瑕疵がある場合は重要事項説明書に記載されます。不動産会社の担当者より買主に説明をしますので、買主は納得の上に捺印することになっています。これにより、説明義務と相手の同意が証明できます。

4、隠すつもりはないのに不備があった場合はどうなる?

目に見えている設備などの関してはいいですが、建物の本体に隠れていて、売主も知らないような瑕疵が存在する可能性もあります。

たとえ意図的に隠していたわけではなくても、本当に気づいていなかったとしても、原則、瑕疵担保責任により売主が修理費を負担するなどの対応をおこなう必要があります。

(1)そもそも瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任とは、民法と宅地宅建業法で定められた規定で、不動産売買で隠れた瑕疵(欠陥や傷)があった場合、売った人は買った人に対して責任を追うというものです。

つまり、物件の欠陥を告知しないまま売却をしてしまうと、後々、物件の不具合が見つかった場合、売主にクレームがいき、売主は以下の義務を負うことになります。 

  • 買主の修繕依頼に応じる義務
  • 買主からの損害賠償請求に応じる義務
  • 買主からの契約解除の要求に応じる義務

(2)瑕疵担保責任の期間

売主に瑕疵担保責任があるとはいえ、不具合が見つかったらいつでも、何でもかんでも売主の責任ではありません。

一般的には、中古物件における瑕疵担保責任は、

  • 設備などに関しては売った日から3ヶ月
  • 建物の本体に関しては買主が知った時から1年以内

と有効期限が決められていることが多いです。

しかし、個人の売主の場合、瑕疵担保責任を必ず負わないといけないというわけではないので、場合によって「瑕疵担保責任を負わない」と選択することもできます。その場合、売却に少なからず影響が出ますので、担当者と事前に相談されるといいでしょう。

(3)瑕疵担保責任を回避するにはどうしたらいい?

瑕疵担保責任を回避するためには、売る前にできるだけ家に不具合、修理が必要な箇所はないか、不動産会社にもチェックしてもらうようにしましょう。

なお、築年数が古い一戸建てなど売主でもなかなか不具合を把握仕切れない場合、瑕疵担保責任を負わないという選択を検討するのもいいでしょう。

まとめ

今回は、中古物件の売却で不利にならないための注意点などについて書きましたが、いかがでしたでしょうか。

物件を売却した後に、買主とトラブルを起こさないためにも、売主が知っている物件の不具合などをきちんと把握し告知するようにしましょう。また、買主に伝えるべき内容なのかどうかご自身で判断ができない場合、事前に不動産会社の担当者に相談するようにしましょう。